日本の野球界の潮目を大きく転換するビッグニュースが飛び込んできました…!
それは長年、野球界や野球ファンの間で議論されてきたセ・リーグの指名打者(DH)制導入についてです。
セントラル・リーグは2025年8月4日の理事会で、2027年シーズンからDH制を導入することを正式に決定したのです。
パ・リーグが1975年に採用して以来、約半世紀を経て、セ・リーグも同調する形で日本のプロ野球は大きな転換期を迎えます。
筆者は、この決定が成されたことで「日本の野球が大きく変わる」という歴史的な瞬間に立ち会えたのではないかと強く感じています。
この記事では、なぜセ・リーグのDH制の導入が来年からではなく「2027年からなのか」という点に加え、「なぜ今、セ・リーグはDH制導入に踏み切ったのか?」という理由を3つのポイントと導入によって期待される日本野球の変化や現場の声を詳しく解説します。
【結論】DH制導入が2027年からなのは「スカウティングの準備期間」のため…?
2027年のシーズンからDH制を適用する背景には、各球団の未来を左右する「スカウト戦略」が大きく関わっているようです。
なぜ、セ・リーグのDH制導入に数年間の猶予が必要なのでしょうか…?
「DH制導入は2026年(来年)からじゃないの…?」という素朴な疑問があちこちから聞こえてきそうです…!
筆者は、「何かしらの準備期間が必要だということなのかな…?」という漠然とした解釈をしていて、具体的な部分まで突き詰められていませんでした。

広島のスカウト会議 デイリースポーツより引用
結論から言うと、各球団がDH制を前提としたチーム作りに転換するための「準備期間」を設ける必要があり、特に「スカウティング戦略を練り直すための時間」が必要だからです。
セ・リーグの鈴木清明理事長(広島東洋カープ)がその理由を説明しています。
外国人選手、日本人選手のスカウティングは2月から行っている。
DHのない想定で動いてきた。 普通のセ・リーグの野球としてスカウティングしてきた。
新しい選手を探すのか。
猶予はいると私たちは決めていました。
それが1年半ということです。
スポニチより引用
セ・リーグの現在のチーム編成やスカウト活動は当然ながら、「DH制がないセ・リーグ」を前提に進められています。
これを、来年から突然「DH制を導入します」と変更してしまうと、多くの球団が対応できず、大きな混乱を招いてしまうようです…!
なぜ「今すぐ」では間に合わないのか?スカウト活動の裏側
「セ・リーグが2027年からDH制を導入すること」について、事実とその背景は前述しましたが、 「どう頑張っても、2026年開幕に間に合わないのか…」という疑問も湧いてくるのではないでしょうか…。

甲子園で試合を視察する各球団のスカウト週刊ベースボールより引用
なぜ、その評価基準の変更に「数年」という長い時間が必要なのでしょうか。
それは、プロ野球のスカウティングが非常に長期的な視点で行われているからです。
球団のスカウトたちは、ドラフト会議で指名する選手をその年になってから探し始めるわけではないからです…!
例えば、高校生であれば1年生の頃から、大学生であれば低学年のうちからなど長期間にわたって密着マークし、成長の過程や人間性まで含めてリストアップしています。
ドラフト会議は、例年だと10月下旬に行われるため、2025年10月のドラフトまでは時間的猶予が少ないことが容易に想像できます。

2023年のプロ野球ドラフト会議 BASEBALL KINGより引用
2025年のドラフト候補選手たちは、すでにセ・リーグの球団内で「DH制なし」の基準で評価され、リストの上位にいる選手も固まりつつあるのだと考えられます。
「緻密な準備に基づいたチーム編成」という観点からも、現状の既存戦力の把握や今シーズン終了後の移籍や戦力外など、血の入れ替えが敢行されるのがプロ野球の世界であるため、刻一刻と変化するチーム状況を直視する時間が必要なのではないでしょうか…!
だからこそ、「2027年から」という猶予期間を設けることで、スカウトたちは新たな評価基準を持って、現在の中学生や高校1年生といった世代の選手たちをじっくりと発掘・調査する時間の確保に繋がるのかもしれません!
これは、各球団が公平な条件で未来のチーム作りを進めるために、不可欠な時間と言えるものと思われます。
セ・リーグがDH制を導入する3つの大きな理由とメリット
セ・リーグがDH制を導入するという歴史的な決定の背景には、複合的な要因が絡み合っています。
中でも特に大きな理由として挙げられるのが、「投手のケガ防止」や「野球界全体の未来」、WBCやプレミア12などの「国際基準への適応」の3つです。
メリット①投手が打席に立つ負担を軽減し、ケガを防止する

広島・森下暢仁投手日刊スポーツより引用
DH制導入の最も大きな目的の一つが、投手の身体的負担の軽減です。
投手はピッチングだけでも大きなエネルギーを消耗しますが、DH制がないセ・リーグでは、投手が打席に立ち、バットを振り、出塁した際には走塁もしなければなりませんでした。
打席に立つことで生じるのが、デッドボールを受ける可能性と自打球によるケガのリスクです。
こちらの映像は、2017年に阪神・藤浪晋太郎投手が打席の広島・大瀬良大地投手の肩付近にデッドボールを当ててしまったシーンです。
藤浪晋太郎投手が投げたストレート系のボールがコントロールを誤り、大瀬良大地投手の肩付近に当たったのですが、投手が打席に立つことによって、ケガに繋がりかねないリスクと隣り合わせになることが分かりました。
これは、投げた藤浪晋太郎投手も不本意な結果になってしまいましたし、大瀬良大地投手や広島側もヒヤッとしたのではないでしょうか…!
「DH制導入」によって、投手が打席に立った際のケガのリスクを回避することができます!

打席に立つ中日・柳裕也投手 日テレNEWSより引用
それに加え、打球がインフィールドに飛んだ際に生じる全力疾走の機会や出塁した際に訪れるスライディングの機会が消滅するため、それがケガの防止にも繋がります。
DH制を導入すれば、投手は投球に専念できるというメリットがあり、ケガのリスクを大幅に減らすことができます。
これらは、投手の負担軽減に繋がることから、投手のコンディション維持に繋がり、セ・リーグ全体の投手力の向上も期待できるのではないでしょうか…!
メリット② 打者の活路確保に繋がり、野球人口の未来が明るくなる!
近年、野球人口の減少が深刻な課題となる中、DH制導入は選手の活躍の場を広げる一手として期待されています。

DHとして活躍が続く42歳の中村剛也選手 日刊スポーツより引用
2025年までDH制が導入されていなかった「高校野球」や「セ・リーグ」などの試合を見る際、どうしても試合に出ている選手に目が行きがちになってしまうのも無理はありません…!
試合を放送・取材する側としても、スタメンを中心に「この試合の見所はどこなのか」や「勝敗のポイントのおさらい」などを重要視しながら、放送を進めていくため、視聴者も自ずとそうなるはずです。
つまり、何が言いたいのかというと、DH制の採用によって、これまでのDH制のなかった「高校野球」や「セ・リーグ」では、「打撃はピカイチだが、守備に課題があって試合に出場出来なかった選手」が救済されるということです…!
野球界全体として、「打撃が素晴らしい」という「一芸に秀でた選手」の活路が確保された格好となります…!

DHでの起用もあるソフトバンク・近藤健介選手 Full Countより引用
「DH」という専門職があることで、一軍での出場機会を得やすくなります。
これは、守備に難点があり、「代打」を主な職場にしていた選手の「救済」に繋がるだけでなく、「卓越したバッティング技術」を持っていることでこれまでは叶わなかった「DH」での「レギュラー」として活躍の場を勝ち取る選手も増えてくるかもしれません…!
これは「高校野球」や「セ・リーグ」というカテゴリー単位だけの話ではなく、「野球」というスポーツの魅力化につながるのではないかと筆者は考えています!
「バッティングは好きだけど、守備が苦手」だという野球少年や「バッティングは好きなのに、守備練習を強いられて、少し野球が続けにくくなった」などという選手もいることでしょう。

日本ハム・万波中正選手 中日新聞より引用
DH制の導入によって、そういった選手のモチベーションの向上にも繋がり得るのではないでしょうか…!
高校野球においても、「選手の出場機会を増やすこと」などを目的に、日本高校野球連盟が2026年の春の公式戦からDH制の導入が決定しています。
野球界の裾野でもある「高校野球」やトップカテゴリーの「セ・リーグ」において、「DH制の導入」がもたらす波及効果は、現場や有識者、野球に携わる報道陣が考えている以上にメリットが詰まっているのかもしれません…!
メリット③WBCやプレミア12などの「国際大会の野球」への適応
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)やプレミア12といった主要な国際大会では、DH制が当たり前のように採用されています。

WBCで活躍する大谷翔平選手日本経済新聞より引用
メジャーリーグでも2022年からナショナル・リーグがDH制を正式に導入し、両リーグでルールが統一されました。
これまでセ・リーグの選手は、NPBの交流戦や日本シリーズ、そして国際大会で慣れないDH制の試合に対応する必要がありました。
これが有利、不利に繋がることはありませんでしたが、DHの有無がリーグによって異なるというメリットは無かったようにも映ります。
NPBが「ルール統一」という観点でDH制を導入することで、国際舞台でも選手が実力を最大限に発揮できる環境を整える狙いがあるのかもしれません!
野球界が「DH制を導入すること」によって期待される2つのポジティブな変化
DH制の導入は、単にルールが変わるだけではありません。
野球の魅力そのものをさらに増幅させる可能性を秘めているのではないでしょうか…!
DHの導入によって、期待される変化を見ていきます…!
①「バッティングに特化した選手」の新たな輝きの機会を創出!

広島・末包昇大選手 スポーツ報知より引用
DH制は、守備に不安はあっても類まれな打撃力を持つ選手の「受け皿」となります。
これまで「代打の切り札」としてベンチを温めることが多かったスラッガーたちが「DH」として毎試合スタメンに名を連ねることで「打席数の増加」が期待されます。
それに伴い、「規定打席」に到達する可能性が高まります。
規定打席に到達することで「首位打者争い」に加わる条件を満たすことができ、「DHの選手」がペナントレースの終盤に「タイトル争い」に絡むことも可能になります。
勿論、首位打者だけでなく、打席数が増加することで「ホームラン」や「打点」などのタイトル争いに絡める可能性も高まっていきます。
それが「DHのレギュラー選手」の活路を見出すことになり、「バッティング技術を高めること」によって球界のスターになる可能性を生むことにも繋がるのです…!
「DH」という「レギュラーの一枠」が新たに設けられることによって、「バッティング」という野球における「楽しい」を創出する動作への関心が更に高まっていくのではないでしょうか。
また、ベテラン選手にとっても、守備の負担がなくなることで現役生活を長く続けられる可能性が広がり、チームの「貴重な戦力」として輝き続ける道が開かれると見られます。
②DHが採用されることで「試合展開の面白さが倍増」するかも…?
DH制が導入されると、投手への「代打」を考える必要がなくなるため、試合終盤まで切れ目のない強力な打線が続きます。
これにより、一点を争う緊迫した投手戦だけでなく、派手な打撃戦が増え、試合のスペクタクル性が高まることが期待されます。
一方で、「投手の交代タイミング」など、監督の采配の妙が失われるという意見もありますが、「DHを誰に任せるか」や「どのタイミングでDHを解除して勝負に出るか」など、新たな戦術的な駆け引きが生まれるため、これまでに無かった野球観が加わると思われます。
③「投手育成」にも好循環を生む可能性を秘めている…?
DHがあることで「投手」に代打を送らなくても良くなります。
つまり、これまでは投手の打順で「代打」を出していたケースが無くなることによって、「打順が回ってきたから代打を送った」という受動的な理由ではなく、監督の采配という「自発的な選択によっての投手起用」へと変わっていくように思われます。
監督や現場の「リードされていてもまだ長いイニングを投げさせたい」と投手の成長の場を考える場合、うまく立ち回れる選択ができるようになったということになります…!
ピッチャーを育てるという意味では、バッターだけでなく、ピッチャーのレベルの向上にもつながるのではないでしょうか…!
「DH制導入」について現場のリアルな声はどうなのか…?
長年続いてきたセ・リーグ「9人野球」という一つの伝統が変わることに対し、現場からは様々な声が上がっています。

与田剛さんFull Countより引用
NHKプロ野球解説で中日ドラゴンズの監督を務めた経験を持つ与田剛さんは、DH制の導入によって、投手の成長を促進する側面もあるとしつつ、次のような懸念を示しています。
セ・リーグの野球は、「ピッチャーが打席に入るところでそのまま打席に立たせるのか代打でどの選手を起用するのか」という独特の楽しみがある。
これを楽しみにしているファンは、ちょっと残念に思うのではないか」と別の側面も話していました。
NHKより引用
確かに、投手戦で相手のエースが無失点で長いイニングを投げる中、試合は終盤に突入し、勝利のために「代打」を起用して、試合が大きく動くというケースを数多く見かけてきました。
そのセ・リーグにしかない独特の試合の流れを楽しんできた野球ファンにとっては、少し残念に思う部分もあるかもしれません…!

中日・大野雄大投手 中日新聞より引用
中日ドラゴンズの大野雄大投手は、DH制導入において、率直な思いを吐露しています。
5年遅いなという思いです。
打席に立つと労力を使うので、間違いなく先発ピッチャーが投げるイニングは増えると思う」とした上で「指名打者制がある分、強力なバッターが1人入るが、それとてんびんにかけてもピッチングに集中出来る方がいい成績につながると思う。
チームにもプラスに働けばいい」と話していました。
NHKより引用
プロ野球の現場で長く活躍してきた大野雄大投手ならではのコメントというのは、非常に重く感じます。
「ピッチングに集中できる方が良い成績につながる」という言葉が何より説得力があったように思います…!

仙台育英・須江航監督 中日新聞より引用
2022年の夏の甲子園で東北勢初の優勝に導いた仙台育英・須江航監督は、「DH制導入」について、プラスしかないと言い切りました。
間違いなく高校野球は今より面白くなりますね。
選手育成の観点でもプラスしかない。
いろいろな改革を進めていることは素晴らしいことだと思います。
野球を「見る」面白さにおいて打撃は欠かせません。
土壇場での逆転など試合が動くエキサイティングさが人々の「次も見よう」のきっかけになる。
スポニチより引用
「選手育成」や「試合展開のエキサイティングさ」という観点から、大きなプラスだと捉えているようですね…!
筆者は、過去にトークショーで仙台育英・須江航監督と共演した経験があります。
その時も、須江航監督の鋭い感性や歯切れの良いコメントで大いに盛り上がりました。
その語り口に加え、「甲子園優勝監督」という実績をお持ちで「高校野球界を牽引する若き指揮官」という立場からも、須江航監督が発する言葉の影響力は注目度の高さに比例するのかもしれません…!
また、須江航監督は「高校野球」だけでなく、野球のアンダーカテゴリーにおいても「DH制導入」を求めています。
中学や少年野球でも導入してほしいです。
運動も勉強も共通していて、できるから好きになれる。
得意なことが自信に変わり、未来が開けていく。
少年野球は身のこなしが良く、ショートをうまく守れるような子が目立ち、レフトやファーストをやっている子が目立つことは少ない。
でもDH制があれば、打てれば試合に出られる。
活躍の場が生まれ、もっと野球を好きになる子が増えることを願っています。
スポニチより引用
「DH制導入」がもたらす波及効果や「野球人口の増加」、「野球人口の流出」に歯止めを掛けることに繋がるという視点でのコメントから力強さを感じました。
筆者は、「DH制導入」だけでなく、野球界全体が「旧態依然」の体制を抜本的に改革しようという姿勢に感銘を受けています。
DH制導入に限らず、球数制限やタイブレーク、疲労軽減の観点からの日程間隔の調整など高校野球全体も変わろうとしていることをひしひしと感じます…!
時代の流れによって、ルールを順応させていくことはあって然るべきだとも思います。
「変えていいもの」と「変えなくてもいいもの」、「変えざるを得ないもの」…。
様々な視点と客観性を用い、様々な議論を経て、アマチュア野球とプロ野球がこれからもファンに愛され続けるものであり続けてほしいと切に願っております。
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